深刻化する人手不足への対処法が欠かせない

人手不足と高齢化の波

もっと人が欲しい。人が増えればもっと売上が伸びるのに。需要はあるのに供給が追い付かないという状況が顕在化してきている。2024年問題と言われた昨年の労働時間規制が始まって約1年、そして今年は2025年問題という人事的課題も重なる。総務省の労働力調査によると、24年の建設関連の就業者数は10年前に比べて6%減少の477万人。このうち65歳以上が80万人、高齢化率は10年前から5ポイント上昇し2割近くを占める。25年は団塊の世代(1947~1949年生まれ)が全員75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化社会が一段と進むことで、社会全体に様々な影響が生じるとされる中、建設業にとっては職人引退に直結し人手不足の加速につながる。人材獲得競争が本格的に激しくなっていきそうである。
 
新卒社員を獲得するために初任給を大幅にアップしたり、社員のエンゲージメントを高めて退職者を減らすという企業努力はもちろん必要であり、自社で社員大工を抱えること、技術者の教育も欠かせない。そして住宅会社同士の人材獲得競争の前に、他業種との人材獲得競争にも勝たないとならない。新卒獲得は地方圏では特に深刻である。例えばそのエリアに大学が3つしかないとする。優秀な人材を獲得しようとした時に、地元の公務員、大手上場製造企業、金融、インフラ企業等との人の取り合いになる。しかも建築系学科がある大学が1つしかなければ、地元の学生採用はより厳しい。建設業、住宅産業の働き甲斐、魅力が求められる。
 

DXで未来を切り開け

24年の子どもの出生数が70万人を割る等、近い将来の日本の人手不足はより深刻化することは明らかだ。現時点でも人が足りずに工事が停滞しているというケースが増えている。商業施設や工場等の非住宅ではより顕著で、建設会社が契約したうち完了できていないまま手元に抱える工事は15兆円を超え、過去最大に膨らんでいるという(国土交通省の建設総合統計)。建築着工統計でも非住宅の着工面積は減少傾向であり、需要はあっても建設費が高過ぎる、また人が足りず工事が出来ないという状況は地方圏だけに留まらない。人件費と原価の高騰で、利益採算が合わない工事を請け負う企業がなくなっていく。
 
このまま行けば日本の建設業は大きく減退していく。工場等の設備を増やしたいのに増やせない企業が増えれば、設備投資が遅れて日本の製造業全体にマイナス影響が及ぶ。カギとなるのは、人が減っても工事が回るDX推進による生産性の向上。住宅業界でも営業、設計、積算、工事、アフター、総務に至るまで、効率化を進めるITツールは溢れている。少ない人数で今まで以上に業務が回せる仕組みを、本気で考えていかなければならない。
 
■住宅と非住宅の着工床面積の推移
住宅と非住宅の着工床面積の推移

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