実質賃金低下では家は買えない


 

9月期決算は円安効果で上振れ

日本の企業がこの9月期に発表した決算では、利益の上方修正が多かった。
円安、インフレ、経済再開という状況下で、鉄鋼から商社、自動車等、多くの分野で業績が上振れた。コロナ禍でやっと経済が再開している分野も多い。
一見すると、日本の経済は良くなっているのではないかと思える。
ただこの9月期に関しては、想定以上のスピードで進んだ円安により利益が押し上げられている面は大きい。 
 

インフレで実質賃金は低下へ

日本企業の業績は実力以外の外部要因によるものが多分に含まれるため、販売が好調でモノがどんどん売れているというわけではなく、むしろ逆である。
この円安、インフレの経済状況は、上記のような輸出企業の業績やインバウンド需要にはプラスに働くものの、消費者にはマイナスしかない。
コロナ禍に続くインフレ状況下で、賃金も上がらないのであれば、消費意欲は盛り上がらない。 

■インフレ下では実質賃金は低下傾向
インフレ下では実質賃金は低下傾向
 

消費意欲向上には不安払拭が必須

厚労省の毎月勤労統計によると、名目賃金ではコロナ前の水準にようやく戻って来てはいるが、今の物価上昇局面においては実質賃金は低下に向かっている。
このインフレと円安がしばらく続くとするならば、相当な賃上げが必須である。
日本経済、消費を活性化していくことにおいて大事なのは、これから賃金が上がるという見通し、希望が持てるかどうかだろう。
 
一方、日本は雇用が守られるという点は安心と言えるかもしれない。
米国大手テック企業では人員削減の動きが激しくなっている。
アマゾンは今後数ヶ月間の採用を凍結、メタも1万人規模の人員削減を発表し、イーロン・マスク氏が買収したツイッターでは全社員の約半数に突然解雇メールが届いたと話題になった。
雇用が守られることはもちろん大事なことであるが、好業績を収めている日本企業に足りないのは従業員への分配であろう。 

政府の要請や連合の5%賃上げ目標もあり、おそらく従業員への賃上げは大規模に行われると思われるが、実質賃金が上がるところまで上げることが必要である。
高額商品である住宅購入に踏み切るには安心感が欠かせない。
しかも長期に亘る安心、見通しが必要である。
自宅の資産価値の維持、ローン金利、自然災害対策等、あらゆる面で消費者の不安要素を払拭してあげることが、住宅会社の重要な役割かもしれない。 (関)
 

もっと月刊TACTの記事を読む

※無料試読のお申込みはこちら

こちらもいかがですか?

by .