動く家という選択肢

これから施工の手が足りなくなることが予想されている。施工の手間が省けて、完成まで手軽に持って行ける家の開発は、これから重要なテーマだろう。究極のところでは、24時間程度で完成する3Dプリンターで作る家もある。

そんな新しい概念の住宅として、最近、テレビ等のメディアでも度々紹介されているのが、トレーラーハウスやムービングハウスといった類の移動できる家だ。ニッチではあるものの、実際に売れ行きは伸びているという。

基本の本体1ユニットの広さは28.8㎡と狭いが、2つの寝室も付いて750万円。最短でオーダーから2週間で工場出荷でき、内装工事を現場で行っても1ヶ月半程度で入居できるという。
移動が出来るということで、従来の住宅建築という概念とは異なり、車を買うような感覚と言えるかもしれない。

このムービングハウスは北海道千歳のビルダー、アーキビジョン21が「スマートモデューロ」として販売している。元々の開発のキッカケは東日本大震災だったということで、仮設住宅としてのスタートだったわけだが、実用性も高い。
今年は災害が極めて多いこともあって、災害時住宅は注目も集まる。

先日の台風21号も猛烈な強さで、近畿地区の被害は甚大であった。同商品は台風にも強いようで、実際に紹介されていた事例では、多くの台風被害が起きる奄美大島で宿泊施設として活用されていた。

家具等を設置したそのままの状態で移動できるということで、引っ越しも楽。増築や減築、ユニットの組み合わせも自由自在に出来る。住宅だけでなく、オフィスやカフェ、宿泊施設としての活用も可能で、また3~10年といったリース契約も出来るという。
新しい感覚の住宅として、またモノを売買することに馴染んだ世代にとっては、こういった家の買い方も一つの選択肢となってくる可能性はある。

以前東京モーターショーにおいて、日産自動車が、EVのリーフと絡めて、宇宙船のような移動できるスマートハウスを発表したことがあった。これも東日本大震災の後に出て来たアイディアであって、災害国の日本においては、こういった移動できる家には意外と需要はあるかもしれない。
実際に自給自足型の災害避難船として、スマート・アーク研究所というところが今も提供しているようだ。

少し現実離れしているようでもあるが、動く家という選択肢は、住宅の一つの形となってくるかもしれない。(関)

 

 

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