25年度住宅着工はリーマン危機時を5万戸下回る?

歴史的な落ち込み見せる住宅着工

25年度上期の住宅着工は34万戸。持家は9.5万戸である。単純に2倍すれば、今年度着工は70万戸を割り、持家着工は20万戸を割るということだ。上半期時点の前年比は、全体17.4%減、持家は16.0%減であり、劇的な落ち込み方だと言えよう。

法改正の影響で3月に前倒し着工があり、4月以降は着工が滞る。これは誰もが想定していたことである。ただ想定以上にこれが長期化している。徐々に減少幅は縮小してきているが、結局、歴史的な大幅着工減が半年間続いている。

法改正の影響が見えにくく、予想も出来ないため、今年の住宅着工を過去と比較することは、あまり意味がない。ただ経済危機のようなダメージを受けたイレギュラーな年との比較は多少意味があるかもしれない。下図ではリーマン危機時の2009年度と直近2年の実績を月次で比較してみた。09年度上期着工は38.4万戸、前年比33.9%減と大幅減となった。この時は貸家や分譲が大きく落ち込んだが、持家着工は十分にあった。今では到底届きそうもない月次2万戸を超えるペースの28.7万戸である。下期の住宅着工が上期よりも大きく、結果として09年度通期は前年比25.4%減の77.5万戸となり、持家は7.6%減に留めている。経済危機時は市場の急変により、前年比で見るとダメージが大きいが、その分回復力もある。
 
■月次住宅着工のリーマン危機時比較
月次住宅着工のリーマン危機時比較

2009年と2025年の経済環境

25年度上期着工実績は34.1万戸とリーマン危機時を4万戸下回った。1割以上少ない数字だ。4~6月のIQで大きくビハインドしているが、8~9月は09年度よりも着工は多く、建売着工は全利用関係の中で唯一前年を上回り始めた。下期は前年に苦戦した建売着工が前年を上回るところまで上がってくる可能性はあるが、他は前年並みまで戻れば良い方だろう。下期の着工がある程度平時に戻ったとして38~39万戸、通期で72~73.5万戸くらいが今の予測値である。
09年度と25年度は、特殊要因による住宅着工激減期に当たるが、リーマン危機時と今の大きな違いは、デフレかインフレかということが一つ。そして金利と株価の動向である。今は金利が引き上げられていく局面にあり、また日経平均株価はリーマン危機時は約7,000円、今は5万円超え。天と地ほどの差がある。経済環境は真逆の住宅不況であるが、住宅着工が回復していくかどうかという期待値は、当時と比べて乏しい状況でもある。
 
■リーマン危機時と現在の経済環境比較
リーマン危機時と現在の経済環境比較
 

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