続く物価高、そしてついに金利上昇か?


 

固定金利上昇の兆し

8月の住宅ローン固定金利を、大手銀行が揃って引き上げた。昨年末、日銀の長期金利の上限引き上げによって、一時的に固定金利が上昇した後、今年は低下傾向にあったが、再び固定金利が上昇に向かい始めると見られる。

9割が選択するという変動金利は低金利競争という状況下においては、今すぐ住宅ローン借り入れに大きな影響が出るというわけではないが、住宅購入のハードルを上げる方向に動く。
 
■住宅ローンの固定金利は上昇へ向かうか
住宅ローンの固定金利は上昇へ向かうか

日銀は金融緩和は続けるという言い方をしながらも、物価高で賃上げも広がり、経済は好循環に向かうと見て、7 月末の金融政策決定会合でYCCの修正に踏み切った。
長期金利の事実上の上限を1.0%に引き上げたことで、一時0.6%超と9年ぶりの高水準をつけた。
大手行は9月以降には更なる金利の引き上げに動き、専門家によれば2~3ヶ月のうちに7月の水準から10年固定で0.4%程度、全期間固定で0.2 ~ 0.3%程度上昇する可能性が高いという。
つまり直近のピークであった今年3月の金利水準まではすぐに上がるということだ。
 
■日銀金融緩和修正による動き
日銀金融緩和修正による動き

変動型も上がれば更なる痛手に

短期の政策金利を修正するのは、まだ先の話だろうが、変動型の金利も上昇する可能性は高まっている。
いずれにしても今は変動型が主力で、しかも低金利ゆえに頭金ゼロか1割で大半をローンにして限界まで借り入れるケースは多い。

ローン金利が上がれば、購買意欲だけでなく、実際に借り入れられる額が減ることになり、高額化している住宅市場にとっては痛手だ。
持家着工は6月に2万戸は回復したが、前年比は12%減と厳しい状況は変わらない。
2023年度の物価見通しも2.5%に引き上げられ、あらゆる面から消費ハードルは上がっている。
 

インフレ基調の売り方にシフト

一方で、トヨタ自動車の23年度第1四半期決算では日本企業で初めて営業利益で1兆円を超える等、企業業績や景況感は良くなっている。
株価も堅調さを維持しており、世の中の雰囲気は貯蓄から投資へという流れにあると言えよう。
安定的なインフレが定着し、消費者がインフレにも慣れてきたとすれば、様子見していた住宅購入にも踏み切るキッカケにはなるかもしれない。住宅は高くなり、ローン金利も今後は上昇圧力が強まるだろう。

モノの価格は変動しやすいものだが、かつてのようなデフレ状態の頭を切り替えて、早期住宅購入のメリットを伝えていく売り方に変えないといけない。(関)

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