ネット社会の進展と住宅業界~5月発刊予定の新資料の内容より一部抜粋

今の世の中、大きく伸びているものと言えば、IT業界やネット広告業界、ネット通販業界など、インターネットに関連するものばかり。ネット通販ブームは宅配ボックスの販売や設置という形で住宅業界にも飛び火したが、あらゆる分野でネットの力による変革が起き始めている。

一方で、他業界に比べて住宅業界とWEBマーケティングの親和性は著しく低い。特に注文住宅の場合は、プランの打ち合わせからローンの計画まで必ず人による説明やコミュニケーションが必要となる為、いやが上にもWEBとの相性は悪くなるという構図だ。2015年には積水ハウスや大和ハウスが、あのアマゾンと手を組みリフォーム商材+施工の販売に挑み始めたが、今のところ「WEBで大きく伸びた」などといった声は聞こえてこない。

ただし今後、あらゆるものがITと連動を始め、TVや新聞などの影響力が低下する中、住宅業界でもITやWEBを使ったアピールは更に重要になっていくものと思われる。

そこで、住宅産業研究所では住宅業界のWEB活用動向を把握する為、大手住宅メーカーのWEB担当者へのヒアリングや、WEBアンケートをベースとした新資料の発刊を今年5月に予定している。今回のコラムでは本資料に収録予定のWEBアンケート(今年3月実施)から、最近の住宅購入検討者のWEB活用のポイントを見てみたい。

 

下グラフは、注文住宅の検討者に「家づくりを思い立ったときに最初に取った行動」について聞いたものである。ポイントは全体の55%がネットで候補となる会社を絞り込むという結果になったこと。もちろん絞り込んだ後、商談の中で合わないと判断されれば契約には至らないが、最近の検討者は、まずネットで「候補とすべき会社」をふるいに掛けていることが分かる。ここで勝負の土俵に上がれなければ検討もされないということになるため注意が必要だ。また同様のアンケートは2011年にも実施しているが、この時との大きな違いは「ネット情報のみで建築会社を決定した(しようとした)」という回答が3→12%と大きく伸びたこと。それだけネット情報を頼りにしようと思う人が増えた事になる。

このことからも企業ホームページの見た目や内容は非常に重要だということが分かる。ただし、検討者が参考にするネット情報というのは自社で展開しているホームページの事だけとは限らない。「打ち合わせに不備があった……」、「アフターサービスが来ない……」など、悪い情報などは口コミサイト等で筒抜けになってしまう時代であり、ネットに悪口を書かれないような日頃の行動にも気を付けたい。またSNSの使い方などについては、一歩間違えれば取り返しのつかない炎上を招いてしまう事もある。ではリスクを回避してWEBで仕掛けなければ良いかと言えばそうではなく、もはや新聞やTVも見ない世代が登場している。このようなデジタルネイティブ世代が住宅購入を検討し始めるのももう間もなくと見られる。今後は、社員全体のネットリテラシーなどを高めることも必要になってくるだろう。

関和則

 

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