アベノミクス7年8ヶ月と住宅業界


 

アベノミクスの住宅業界への影響

安倍首相の退陣によって、アベノミクスが終焉を迎えることになる。賛否両論、功も罪もあると言われる7年8ヶ月という長期政権であったが、このアベノミクス、住宅業界においては一定の恩恵はあったのではないかと思われる。
株高、雇用の増加、法人税の引き下げ、グローバル化の推進とインバウンドの大幅増加といった点では、住宅需要にプラス効果が働いたであろう。

そして黒田日銀総裁が登場してからのマイナス金利政策で、低金利がより一層強まり、住宅需要の押し上げ効果は大きかった。
女性の雇用や1億総活躍社会といった点でも住宅にはプラスであり、共働き世帯が増え続けてきたことも、住宅の購入には影響を与えたであろう。 

一方で、マイナス影響を及ぼしたのは消費増税であるが、これに関しては民主党政権から続く政策であり、2回の消費増税が実施できたという点では、景気自体は良くはなったということでもある。 

■民主党からアベノミクス終焉までの住宅着工戸数の推移
民主党からアベノミクス終焉までの住宅着工戸数の推移
 

安倍政権下の住宅着工動向

株価は2倍に上昇、インバウンドは5倍増とインパクトのある動きを見せたが、実際に住宅着工自体はどう動いたか。住宅着工は中期的なトレンドとしてはマイナスに向かっている認識には違いない。

ただし安倍政権時だけで見てみると、住宅着工はアベノミクス時代にプラス、もしくは横ばいを維持したと言えなくもない。もちろん政権だけで着工がどうこうなるわけではないが、一方の民主党政権時を見ると、2009年度から2011 年度の3年間は着工も谷の3年間だった。

リーマン危機や震災という未曽有の危機もあったことが主因ではあるが、安倍政権誕生の2012 年12月以降、2013年3月期には89.3万戸、2013年度から2018 年度までは90万戸内外をキープした。
この間に8%への消費増税を実施しており、山谷を超えてほぼ横ばいに保ったということは、ある意味、経済的な、あるいは政策的なプラス効果があったとも言える。 

■アベノミクスの住宅への効果とマイナス要素
アベノミクスの住宅への効果とマイナス要素

次の総理が菅官房長官になるのか、新しい政権が本誌発刊時には誕生しているだろうが、アベノミクス路線の良いところはつなげて行ってもらいたい。
コロナ禍という、これも経験したことのない危機と、新しい政権の誕生の中で、住宅市場の新しいステージが始まりそうである。 (関)
 

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