「関係人口」に見る他地域との関わり方


 

日常生活圏以外の地域と関りを持つ人は約1/4いる

国土交通省が三大都市圏の居住者に実施した「地域との関りについてのアンケート」によると、移住や観光以外で、日常生活圏以外の特定の地域と定期的・継続的に関りを持つ「関係人口」は、23.2%と約1/4に達しました。

関係人口とは、地縁・血縁の訪問(帰省等)を除いた他地域と関りを持つ人を表しており、三大都市圏の18歳以上の居住者(約4,678万人)から推計すると、1,000万人超の人が特定の地域を訪問していることになります。
 

関係人口は4分類、趣味・消費型が最多

訪問系の関係人口は4タイプに分類されています。

①直接寄与型(3.0%・141万人)
~産業の創出、地域づくりプロジェクト等を運営

②就労型(3.9%・181万人)
~テレワーク及び副業の実施

③参加・交流型(5.8%・272万人)
~交流やイベント、体験プログラム等に参加

④趣味・消費型(10.5%・489万人)
~飲食や趣味活動等を実施

最も多いのは、地場産品の購入等を目的とした趣味・消費型ですが、祭り等の地域体験プログラムへの参加、本業や副業という仕事のためという人もいます。

また、地域に新たな産業を創出する活動を目的とした人が140万人もいると推計されており、これは将来の移住予備軍も多数含まれているかもしれません。
 

テレワークや副業の制度化で関係人口が増える可能性も

東京都在住者の関係人口の関り先は、首都圏都市部41.4%、地方部28.5%という分布で、首都圏内という比較的近場の関係人口が4割を占めています。大阪市在住者は、近畿圏都市部55.1%、地方部21.0%という分布で、近畿圏内での関りがより強いようです。

関係先と関りを深めるために必要なことを聞いたところ、「時間的な余裕」「つながりを持てる場の確保」「金銭的負担の軽減」等が30%程度と高い回答率となっており、首都圏内や近畿圏内という比較的近場での関りが多いことの理由と考えられます。

注目すべきは、「会社などの理解、テレワークや副業の制度化」という回答で、今調査では10%強と低めの回答率にとどまっています。しかし、新型コロナウィルス対策によるテレワークの普及により、今後、日常生活圏以外の地域と関係を持つ人が増えることも予想されます。

新型コロナウィルス対策の徹底が求められる厳しい状況が続きますが、事態が収まった後には、社会経済や消費者意識の変化による新た住宅需要が生まれることも十分に考えられます。関係人口の増加もそのひとつかもしれません。(脇田)

この記事の著者

脇田 茂樹(常務取締役 関西支社長 )

平成8年10月に住宅産業研究所へ入社。関西支社にて住宅業界全般の調査分析を担当した後、平成14年に東京本社TACT編集部に異動。住宅業界向け情報誌『月刊TACT』の取材・編集を中心に、住宅市場動向の調査分析や、マーケティングレポートの作成を担当。
平成19年に関西支社に戻り、平成23年12月に常務取締役 関西支社長に就任。大阪を拠点に、住宅業界全般のマーケティング分析を行っている。

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