FC・VCの役割の変化とトレンド

 

住宅FCの最盛期

小さい工務店単独では開発できない商品を提供し、スケールメリットによって工務店が自前で仕入れるよりも安く部材を供給する住宅FC。その最盛期は今から20年程前の、ローコスト住宅の需要が高まっていた頃。
「○○ホーム」の看板を掲げるロードサイド型の単独展示場に、チラシを打ってキャンペーンやイベントで呼び込むという方法で集客しやすかった時代である。
 

住宅FCの役割の変化

その後の住宅需要の変化や、住宅市場における勢力図の変化(大手のグループ化・寡占化)によって、住宅FCの役割は少し変化してきている。中小工務店に対しては、事業を軌道に乗せるための道具を与えるだけでなく、もう少し踏み込んだ経営コンサル的なサポートが求められるようになってきている。
すでにある程度の実績があるビルダーが、さらにシェアを高めるために新たなFCに加盟するという動きも増えてきている。
 

現在の住宅FCのトレンド

現在の住宅FCのトレンドとしては、以下のようなことがあげられる。
 

1.マルチブランド化

最近のビルダーの傾向として、主力商品に加え、価格帯や商品コンセプトの異なる複数のブランドを取り揃えることで幅広い客層を捕捉し、地域における自社のシェアを高めるマルチブランド戦略が商品戦略のトレンドとなっている。
FC本部も単一のブランドの中で商品バリエーションを拡充するのではなく、新たに別のブランドを設けることでこのような需要への対応力を高め、加盟店を囲い込むような動きが出てきている。
ex. クレバリーホーム → VARY’S、エースホーム → HUCK
 

2.モノからコトへのリブラディング

現在の消費行動は「モノ消費」から「コト消費」にシフトしてきていると言われている。FC本部各社も加盟店に対して商品や部資材、販促物といった「モノ」を供給するだけではなく、エンドユーザーに向けて「コト」で共感してもらえるようなブランディングを強化してきている。
ex. アイフルホームのCMリニューアル
 

3.WEBを使ったプロモーション

FC本部が、ブランド総合ホームページ、InstagramやPinterestなどのSNS、イメージ動画、オウンドメディアなどを駆使して、エンドユーザーに対しブランドイメージを発信し、WEB経由の本部集客から加盟店に見込み客を送り込む戦略を強化
ex. 見学会予約フォーム、Instagramの投稿キャンペーン
 

4.手厚い経営サポート・コンサルティング

加盟店の集客や営業の支援に留まらず、経営的なところまで入り込むコンサルティングに近い支援を行っているFCが増えてきている。特にビルダーを母体とするFCの場合は、自社の直営店舗のノウハウをFC加盟店にそのまま当て嵌め、よりリアルな営業支援をできることが強み。
ex. 桧家住宅、ジョンソンパートナーズ
 

5.非住宅、在来木造以外の工法

ビルダーの事業多角化の一つとして、住宅以外の非住宅の建築請負、特に木造での中大規模建築への注目度が高まっている。強固な構造を強みとする独自工法を供給するFC・VCでは、木造非住宅の提案を強化している。
ex. SE構法、テクノストラクチャー
 

住宅FCの新勢力

新工法や新建材、IT技術を使った業務効率化システム、住宅FCの新勢力も市場に参入してきている。FCに求められる目的が変化してくる中で、旧来型の住宅FCも市場の変化や他社の動向を見ながら、サービス内容やブランディングを見直してみるべきだろう。(布施
 
■FC相関図
FC相関図

この記事の著者

布施 哲朗

2007年8月に住宅産業研究所へ入社。TACT編集部、マーケティング部を経て、2011年12月にTACTデスク、2018年11月にTACT編集長に就任。
同誌では、ビルダーを中心に全国各地の住宅会社へ直接取材を行い、最先端の商品戦略・営業戦略の情報を収集し記事を執筆、他媒体への記事提供も行う。一方で、建売住宅、リフォーム、海外市場など、多分野の調査資料を作成する他、受託調査、講演、セミナーも行っている。

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