ビルダーのZEH対応の現状とこれから


 

住宅業界全体の性能レベル

住宅業界全体の性能レベルは年々高まっている。昨年末の国交省の発表で、住宅における省エネ基準適合の義務化が先送りになったが、躯体の性能を向上することは、ビルダー・工務店にとっても商品戦略における必須項目と言える。
 

ZEHの断熱性能

断熱性能に関しては、全国上位の広域展開型ビルダーや、地域である程度のシェアと知名度があるビルダーは概ね最高等級の断熱レベルはクリアしていると見られるが、ZEHへの取組を先進的に勧めている大手ハウスメーカーに対し、ビルダーのZEH化には温度差がある。

19年2月時点でのZEH登録ビルダー数は7,153社。そのうちZEH普及実績を公表している6,172社の17年度のZEH実績を単純平均すると11.1%となる。普及率0%の業者は4,150社で、公表ビルダーの67.2%を占める。

一方で、17年度のZEH実績が50%を超えたのが569社、100%の業者も223社あった。分母となる棟数が少ない会社は高く出やすいが、断熱性能の高さを元々強みとしているエコワークスやエルクホームズ、アイ・ホーム、ハウスメーカーと比べて割安にZEHで建てられると訴求するヤマト住建は、各エリアの上位に並ぶ棟数で普及率が高く、ZEHが武器となっている。
 

ビルダーのZEHへの取組

ZEHビルダー登録をしていても、まだ実績のないビルダーへの救済策として、環境省では19年度のZEH補助金事業において、ZEHに初めて取り組む住宅事業者は一般公募とは別枠で、抽選なしで予約できるようにする特別枠を設ける。

これまでの制度では、ZEHの申請をしても必ず補助金を獲得できるわけではなかったため、ZEH化によるイニシャルコストの差額を埋める営業トークができなかったビルダーは少なくないだろう。この新たな支援策によって、ビルダーのZEHへの取組は一歩前進するかもしれない。
 

2020年には住宅の50%以上がZEH

計画通りであれば、2020年には住宅の50%以上がZEHで建てられることとなる。いずれZEH基準の躯体性能も各社の標準となれば、それだけでは差別化にはならなくなってくるだろう。性能を訴求するのであればそれ以上の仕様が求められる。

18年度からはZEHより家の基準のZEH+が設けられ、今後はさらにその上のHEAT20 G1(UA値0.34~0.56)、HEAT20 G2(同0.28~0.46)、新住協が提唱するQ1.0(Q値1.0以下、UA値0.24相当)等の基準を目指さないと、断熱性能の高い住宅とは言えなくなってくるかもしれない。
布施
 
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ZEH新制度

この記事の著者

布施 哲朗

2007年8月に住宅産業研究所へ入社。TACT編集部、マーケティング部を経て、2011年12月にTACTデスク、2018年11月にTACT編集長に就任。
同誌では、ビルダーを中心に全国各地の住宅会社へ直接取材を行い、最先端の商品戦略・営業戦略の情報を収集し記事を執筆、他媒体への記事提供も行う。一方で、建売住宅、リフォーム、海外市場など、多分野の調査資料を作成する他、受託調査、講演、セミナーも行っている。

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