ローカルでは個性の強い商品は要らない?

「TACT」のエリア別ビルダー記事では、毎月全国のどこかの県に取材に行っています。主にその県のNo.1クラスのビルダーや、急成長しているビルダーに取材に行くことが多いですが、その県の中のローカルエリアでシェアの高い、地域密着型の中小ビルダーもできるだけ取材するようにしています。

先月の4月号では和歌山県田辺市の高垣工務店、その前には兵庫県姫路市のモリシタアットホーム、岐阜県池田町の森住建、奈良県香芝市の香芝木材センターなどが、そのようなビルダーの代表例と言えるでしょう。

地域密着型の中小ビルダーに共通している傾向として、商品に強い個性を出していないということがあります。他社には無い商品の強みを持つことが差別化には必要だと言われがちですが、商品の個性が強いとそれを好む客層は限られます。

市場規模の大きい商圏では、一部の好みに合う商品で差別化することで一定数の受注が取れますが、小さい商圏ではなるべく多くの客層に好まれるような「普通の家」が最も対応力があります。

先月取材した、鳥取県境港市のアート建工も、以前はこだわり客向けに、デザインに凝った完全自由設計の住宅をローコストで提供していましたが、こだわりが強い割に予算が厳しい客層を集めることとなり、棟数は年間10棟前後を推移し、利益が出ない時期が続いていました。

そこで、ターゲットを同エリアで最も需要が多い年収400万円以下の子育て世代にシフトして、商品も幅広い層に受け入れられやすい「普通の家」を目指すようにし、集客や営業の戦略もそれに合わせてシフトしたところ、現在は年間30棟を受注できるようになっています。

市場規模の小さいローカルでは、「商品」で他社と差別化するのではなく、それとは別の要素、例えば「会社」や「人」で選んでもらうような戦略のほうが合っているのかも知れません。

「TACT」5月号では、島根・鳥取のビルダー記事と、全国市区町村別シェアランキングの特集を掲載しますので、ご期待ください。(布施)

この記事の著者

布施 哲朗

2007年8月に住宅産業研究所へ入社。TACT編集部、マーケティング部を経て、2011年12月にTACTデスク、2018年11月にTACT編集長に就任。
同誌では、ビルダーを中心に全国各地の住宅会社へ直接取材を行い、最先端の商品戦略・営業戦略の情報を収集し記事を執筆、他媒体への記事提供も行う。一方で、建売住宅、リフォーム、海外市場など、多分野の調査資料を作成する他、受託調査、講演、セミナーも行っている。